ゴマの歴史と生産地~世界のゴマ事情

胡麻

ゴマの歴史と生産地

ゴマの誕生

ゴマ
アフリカには、世界に分布するゴマの仲間のうちの30種が自生しており、そのなかのひとつがゴマの祖先ではないかと考えられています。

紀元前4000年ごろにはエジプトで、3000年ごろにはすでに中国でゴマが栽培されていたことを示す史料が発掘されています。

ゴマは水分の少ない土地でも育ちやすく、栄養が豊富で風味があり、保存しやすく輸送も便利だったので、世界中に広まっていきました。

 
アフリカからゴマが伝わった経路は大きく二つに分かれ、中近東や中央アジアを経由して中国に伝わったものと、海路でインドに伝わったものがあります。

中国に伝わった経路は、シルクロードになぞらえてセサミロードと呼ばれています。

なお、アメリカ大陸にゴマが伝わったのはかなりあとのことで、17世紀の奴隷貿易のときになります。

ゴマはその後、その土地ごとに合った形で定着していきました。

 
現在でも全世界でゴマ料理が作られており、食卓に欠かせない食品のひとつになっています。

メソポタミアでは貴重な作物

ゴマとメソポタミア
世界最古の文明であるメソポタミアでは、ゴマは神々の時代から利用されてきたと言い伝えられてきました。

国王の清めの儀式や、農耕の季節の始まりの祭礼で神々に捧げたり、お清めにゴマ油が使われていたとされています。

お菓子や灯り用の油などにも使われていて、とても貴重な作物として扱われていました。

また、紀元前6世紀頃の粘土板には、銀に代わってゴマで支払いをしたと記録されていて、お金がわりに使われていたみたいです。

古代エジプトでは油や薬

ゴマの誕生
ゴマのふるさとに近いエジプトでは、ゴマは油や薬として大切にされていました。

古代エジプトのファラオ(王様)だったツタンカーメンの墓からは、黄金のマスクなどのさまざまな財宝といっしょに、食べものを入れた壺も発掘されています。

その中のひとつからゴマが見つかっていて、灯り用の油や香料、またはミイラを作るときにも使っていたみたいです。

クレオパトラは、肌を美しくするためにゴマ油をからだに塗っていたといわれています。

インドではゴマは欠かせない

ゴマとインド
インダス文明にもゴマは登場していて、油や薬として使われていました。

いまでもインドには、たくさんの種類のゴマがあって、昔から伝わるお祭りにゴマは欠かせないです。

ゴマを使ったお菓子を作って先祖へのお供えにしたり、インドの古代医学であるアーユルヴェーダには、ゴマやゴマ油がたくさん使われています。

中国では中華料理に使用

ゴマと中国
中国では、紀元前3000年ごろの遺跡からゴマが出土しています。

ゴマは、シルクロードへの遠征時に、胡国からゴマを持ち帰ったことにより伝わったとされています。

 
中国では古来、ゴマは不老不死の秘薬や食べる丸薬とも考えられていて、よく食べられていました。

中国で最も古い医学書の中には、ゴマの効能がすでに記されていて、その後書かれた多くの医学書にもゴマについて多くの記述がされていました。

その後、香りや味に優れたゴマやゴマ油が料理に用いられるようになり、現在の中華料理の基礎ができました。

ゴマと中華料理

ゴマと中華料理
中国にゴマが伝わったのは、紀元前3000年ごろなのですが、現在では、ゴマの生産量において世界一をインドと争っています。

中国は、かなり昔からゴマを利用していた地域の一つであり、栽培にも適しています。

また、中国には医食同源という思想があり、ゴマの健康効果と結びついたところもあったので、ゴマは広まりました。

 
芝麻醤(チーマージャン)の芝麻とは、中国語でゴマという意味であり、黒ゴマは健康食品や漢方薬の材料として使われることが多く、白ゴマは油をしぼるために使っています。

特に四川料理はゴマをよく使うことで知られ、担々麺や棒々鶏(バンバンジー)などに使用されています。

日本にゴマが入ってきたのはいつ?

日本とゴマ
日本にゴマが伝わったのは、遺跡研究の結果、縄文時代晩期である紀元前1200年ごろであり、アフリカから中国を経由して日本に伝わってきたと考えられています。

元々中国では、西側(中央アジア・現在のイランあたり)の部族をと呼んでいたそうですが、シルクロードを経由して普及した文化の多くには、胡の文字が使用されていました。

たとえば、胡弓(こきゅう)や胡座(あぐら)・胡椒(こしょう)・胡瓜(キュウリ)・胡桃(クルミ)などがありますが、胡麻もそのひとつになります。
ゴマの実が麻の実に似ていたので、胡の国の麻ということから、胡麻と呼ばれるようになったと考えられています。

 
ただ、その当時、ゴマがどんなふうに使われていたのかは実際にはよくわかっていません。

ゴマが食用として利用されるようになったのは、仏教の伝来と大きく関係しており、仏教では殺生や肉食が禁じられていたので、その代わりにゴマが使われていました。

 
ゴマは、昔の日本ではとても高価に取引されていました。

農業技術がまだ十分発展していなかったため生産量が低かったうえに、ゴマが料理に格別の美味しさを加える万能調味料だったからです。

ゴマは庶民の口にはなかなか入らず、貴族や大名・寺社・寺院の身分の高い人達の食べものという時代が長く続き、その後、日本独自の精進料理や懐石料理の基本が作られました。

精進料理は肉などのたんぱく質が摂取できないため、栄養不足になってしまう傾向がありますが、高品質なたんぱく質を持つゴマを摂取することで、その欠点をカバーしていました。

ゴマの利用

ゴマの利用
奈良時代になると、ゴマ油が調味料として利用されていたみたいです。

その後、室町時代にすり鉢などが中国からやってきて、すりゴマを使った料理などができました。

江戸時代にはゴマ豆腐が登場しており、ゴマ菓子なども流行しました。

 
ゴマ油は、天ぷら油として利用され、天ぷら料理はすき焼きとともに日本料理の代表となりましたが、天ぷら油にゴマ油を使っているのは、日本くらいです。

明治や大正時代になると、ゴマせんべい・ゴマようかん・ゴマ最中などが人気になりました。

精進料理とゴマ豆腐

精進料理とゴマ豆腐
室町時代から江戸時代にかけて、中国からやってきた禅宗のお坊さんが伝えた料理から、精進料理と呼ばれる野菜だけを素材にした料理が生まれました。

精進料理ではゴマをよく使いますが、ゴマ豆腐はゴマを使った日本の代表的な料理であり、精進料理のひとつになります。

昔、ゴマは貴重な食材として、貴族や寺院しか使用できませんでした。

大豆と並んで貴重なたんぱく源になるということが、精進料理でよく使われた理由だと思われます。

アメリカにも伝わるゴマ

ゴマとハンバーガー
アメリカにゴマが伝わったのは、16世紀から17世紀にかけてのことです。

スペイン人やイギリス人によるカリブ海諸島とアメリカ大陸への奴隷貿易が盛んに行われ、アフリカ西部から多くの原住民(黒人)が連れてこられました。

このとき持っていた黒人ゴマ(ニグロゴマ)もいっしょにアメリカやメキシコに渡りました。

 
当時のアメリカは未開拓地であり、ゴマのように香りが豊かなものはなかったようでした。

そこでゴマは、マスタード・黒胡椒に続く第3のスパイス(香辛料)として脚光を浴び、後に食用油の女王と呼ばれ、たいへん珍重されました。

さらに、白炒りゴマつきパンが全米チェーンで爆発的に売れ、後のマクドナルドハンバーガーになるなど、多くのサクせスストーリーの立役者になりました。

 
また、胡麻の発祥の地に近いアフリカ・ナイジェリアのベネ川流域では、ゴマの栽培が非常に盛んであり、そのためアフリカ西部一帯では、ゴマのことをベネと呼ぶようになりました。

奴隷貿易にともなって、アフリカからゴマがアメリカに持ち込まれたときにも、この呼び名は引き継がれました。

アメリカ南部のサウスカロライナ州やジョージア州に住むアフリカ系アメリカ人の間では、今でもゴマのことをベネと呼ぶ人たちがいます。

セサミストリートの由来

セサミストリート
1950年代に、テキサス州に住んでいたジェームスとロイのアンダーソン兄弟は、ゴマに目をつけました。

彼らは未開拓地を整備し始め、大々的なゴマの栽培事業に着手しました。

そして、兄弟は良質なゴマ栽培に成功し、その利益で街作りを行いました。

その街のメインストリートは、ゴマへの感謝の意味を込めて、セサミストリート(ゴマ通り)と名付けられました。

 
英語でゴマはセサミといいますが、これはアラビア語に由来しています。

また、アンダーソン兄弟は子どもたちの教育にとても熱心で、街の一角に入植者たちのための学校や協会などの施設を造り、人種や地位に関係なく授業を行いました。

 
この彼らの教育方法に関心を示したのがテレビ局です。

貧しい子どもたちは、幼児期に必要な教育を充分に受けられないでいました。

学校に行くようになってもなかなか成績がよくならないので、そうした子どもたちに学ぶチャンスを与えようと企画されました。

 
そうして、愉快な人形たちが登場する教育番組をスタートしたら大ヒットになりました。

それがあのセサミストリートだったのです。

その後、この番組は日本でも楽しめるようになり、現在では世界中の子どもたちに愛されています。

ゴマかす・ゴマをするの由来

ゴマ団子
小麦粉にゴマを混ぜたお菓子が江戸時代に流行しましたが、人々の間でゴマ菓子と呼ばれていて人気がありました。

このお菓子は、見た目はふくらんでいますが、食べてみると中は空洞です。

ここから、外見は立派だが中身がともなわないものをゴマ菓子と呼ぶようになり、それが転じてゴマかすという言葉ができたといわれています。

また、料理の味がいまひとつの時、ゴマを加えると味がよくなる、つまりはゴマを加えて風味よくゴマ化すことから、ゴマかすになったともいわれています。

 
一方、ゴマをするという表現の由来もゴマです。

ゴマをすっていると、すり鉢のあちこちにゴマが散ってベタつきます。

これが、誰にでもいい顔をして機嫌をとり、自分のことだけを考える様子に似ていることから、ゴマをするという表現が生まれたといわれています。

 
また、昔は寺でゴマをすることが修行のひとつであり、坊主が一所懸命ゴマをすると、和尚の機嫌がよくなるとされていました。

そこから転じて、ゴマすりという言葉ができたともいわれています。

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