京野菜とは?歴史と特徴
古代から都であった京都は 、長年にわたり、政治・文化の中心地として栄えてきました。
京都には多くの人々が住んでいて、その人達の生活を支えるためたくさんの食料が必要だったことから、野菜の栽培が盛んにおこなわれてきました。
京都は、水質が良く土地が肥沃で温暖、盆地特有の寒暖差が大きい気候だったので、野菜づくりには最適の地でした。
また、さらに美味しい野菜をつくるため、品種改良や栽培技術の改善も進められてきました。
その背景には、京都という土地が、地理的に海から遠いので鮮魚の入手が難しく、多くの寺社による精進料理・宮廷での料理・茶道の懐石料理などの需要があったからになります。
その結果、恵まれた風土と農業の創意工夫によって、美味しい野菜がたくさん生み出されて、人々の食生活に根を下ろしていきました。
そして、伝統を重んじる京都人の気風によって、「京野菜」として今日に受け継がれるようになったのです。
京野菜は、露地栽培が主流なので、野菜の旬の美味しさを味わうことができます。
京野菜とは、歴史と伝統に育まれた魅力あるものであり、四季のうつろいと旬の美味しさを味わえる野菜。
京野菜は、野菜づくりに適した土地と都におけるさまざまな需要があったので、他の地域では見ないような独特の野菜が多く、京都に行かないと食べられない野菜も多くなっています。
京野菜の種類と特徴
京山科なす
京山科なすは、丸みのある卵形で、果肉がやわらかく水分が多くなっています。
皮が非常にうすく、歯で噛んで切るという感じが全くしないほどやわらかくて、ぬか漬けには最高とされていました。
ところが、この皮がやわらかいためすぐにキズがついたり、変色しやすいので、現代の流通についていけなくなってしまいました。
また、収穫量も少なく、病気にも弱いため、今ではすっかり新しい品種にとって代わられました。
調理法としては、漬け物から焼きなす・煮物など幅が広いです。
賀茂なす
賀茂なすは、古くから栽培されている、黒紫色をした直径10~15cmの大きな丸なす。
江戸時代より日本一といわれているなすですが、「水喰いの肥料食い」といわれるほど、農作業としてはとても重労働である、やっかいななすになります。
その字のごとく、京都市は北区上賀茂の一帯で栽培されてきたなすで、ある時期までは門外不出のなすでした。
しかし最近では、京都市以外、京都府下はもとより全国で作られるようになっています。
皮はやわらかく、果肉はきめが細かく、煮くずれしにくいのが特徴。
旬は6~10月ごろで、田楽や煮物・浅漬けに向いています。
伏見とうがらし
伏見とうがらしは、伏見付近を中心に栽培されていて、長年にわたって改良されてきたものになります。
ピーマンと同じ甘味種であり、とうがらしの中では最も細長い品種。
長さは10~15センチもあり「伏見甘長とうがらし」といわれていますが、ひものような形状から「ヒモ」とも呼ばれています。
辛みが少なく、子どもから大人まで食べることができる身近な京野菜。
焼き物や炒めもの・煮物などで食べられています。
聖護院だいこん
聖護院だいこんは、現在の京都市左京区聖護院あたりで栽培しているうちに、今のような大きな丸型になりました。
丸くて大きな聖護院だいこんは、大根おろしなどには向かず、「おでんや煮物専用」のだいこんといってもいいくらいです。
火を入れて、柔らかくなるのに煮くずれしないのと、苦みや辛みがなく甘いのが最大の特徴になります。
大きなだいこんをサイコロ状に切って、コトコトと炊くと、おでんのだしのうま味をとことん吸収します。
その上、形状はサイコロのままで、口の中に入れてはじめてとろけます。
聖護院かぶ
聖護院かぶは、千枚漬けで有名な、最大級の大きさをしているかぶ。
繊維が少なく、やわらかくて甘みやうま味が多いのが特徴になります。
聖護院だいこんとよく間違える人がいますが、葉っぱの部分にだいこんとかぶの違いがあります。
しかし、最近では葉っぱを切り落として販売していることも多く、違いはわかりにくくなっています。
聖護院かぶは、他の京野菜と同じく、いくら煮ても煮くずれしません。
また、だしの味をよく吸収する特性があるので、おでんや煮物などに適しています。
壬生菜
葉が細長いへらのような形をしていて、ほんのりした辛みがあるのが特徴であり、千枚漬けや煮物に使われています。
サッとゆでれば、サラダやあえものにも合います。
京たけのこ
京たけのこは、17世紀頃、京都の西山に植えられた孟宗竹が定着し、京たけのこの産地になったといわれています。
品質や味の良さでは京都のたけのこが日本一とされていて、その中でも京都市西京区塚原産のものは最高とされています。
京たけのこは、皮が白くてやわらかく、甘みがあります。
米ぬかを使わずに短時間でゆであげることができますが、とくに最上級のものは、数分ゆがいた後そのまま食べると、まるでリンゴやナシのような味がしてとても美味しいです。
九条ねぎ
九条ねぎは、奈良時代の頃からある歴史の古い野菜であり、その名の通り、京都市内の九条付近で、今でも栽培されています。
東海道新幹線下りの車窓から東寺の塔が見えた時、その近くには九条畑の畑が一面に見えてきます。
葉の中のぬめりが特徴であり、やわらかくて風味がよく、和・洋・中とどんな料理にも合います。
くわい
くわいは、16世紀末頃、低湿地で染料に使う藍の栽培が行われましたが、その裏作として栽培されるようになったのが始まりだとされています。
本来は、10月の末から4月ごろまでが収穫の時期でしたが、今では迎春用としてお正月のころにしか消費されないので、12月のみの収穫になっています。
昔ながらの伝統的な手作業で作られていて、ゆりねや栗に似たほっくりとした食感があります。
鹿ヶ谷かぼちゃ
鹿ヶ谷かぼちゃは、ひょうたん形の手のひらサイズで、下半分に種が入っています。
日本かぼちゃ特有の粘質であり、水分が多く、煮炊きしても形が崩れないのが特徴になります。
普通のかぼちゃよりも淡白な味であり、煮物やそぼろあんかけに向いていますが、食用というよりは、飾りや装飾に使われることのほうが多いです。
えびいも
えびいもは、えびのようなしま模様と、反り返ったような形からこの名前がついています。
親いもから小いもが次々と増えて縁起がいいため、おせち料理にはかかせない野菜であり、古くから京都のおばんざいとして使われています。
棒だらといっしょに炊いて、「いもぼう」という京料理の一つとして重宝されています。
普通に煮てもいいですし、おでんに入れても美味しい、高級な里芋になります。
堀川ごぼう
堀川ごぼうは、中国から薬草として持ち込まれ、改良されたものになります。
長さ50~80cm・直径6~9cmくらいで、中が空洞になっているのが特徴であり、筒切りにして空洞に肉を詰めた料理が有名です。
堀川ごぼうが持つ風味や味・香りは普通のごぼう以上で、きんぴらごぼうにすると美味しいです。