青梅の毒
昔から、梅の種には毒があるといわれています。
梅の実の種は梅干しにすると固くなりますが、青梅のうちはまだやわらかいので、ついガリッとかんでしまうことがあります。
しかし、青梅をガリガリかじると核が砕け、そのために発生した青酸のせいで、おなかが痛くなったりします。
青梅は実は怖いもので、なにも知らずに中の種を食べすぎて中毒死する人もいました。
こういう事があったので、梅は食うとも核(さね)食うな、中に天神寝てござるということわざができました。
このことわざは、梅の種の毒にあたらないように、梅にゆかりの深い天神様(菅原道真)の威光を借りて、注意を促したものだといわれています。
青梅に含まれている毒というのは、青梅の仁(じん・核の中身)に微量に含まれている青酸のことです。
青酸といっても、アミグダリンという青酸配膳体(青酸をもつ物質)になります。
これが、酵素(化学変化を促進する物質)の作用で分解すると青酸を生じるので、一般に青酸が含まれているとされるのです。
この青酸は、最初は果肉の中にあって、実を害虫から守り、実が完成したら今度は種に移って、種を守るはたらきをしています。
けれども、梅が完成してしまうと自然に消滅してしまうので、完熟した梅の実なら生で食べても心配ありません。
また、梅干しにすれば種の毒も消えてしまいます。
梅干しの種の活用
梅の種には、果肉と同じように殺菌効果や素材の旨味を抑える効果があります。
独特の風味があるので、捨てずにみりんに漬けて使うといいです。
ただ漬けているだけなのに、ほんのり梅の風味がして、上品な味わいを楽しむことができます。
料理に使う時は、肉やレバーをゆでる時や魚を煮る時に加えると、素材のくせや脂っこさがかなり消えます。
また、魚のマリネを作る時に種を入れると、魚の身がほどよくしまり、とても美味しくなります。
梅干しの種に関する言い伝え
日本全国の漁村には、梅干しに関するおもしろい言い伝えがあります。
それは、梅干しの種を海に捨ててはいけないということです。
たとえば漁師が梅干しの入った弁当を持って漁に出かけ、それを食べても種だけは持って帰り、陸に上がってから始末します。
その理由は地方によってさまざまですが、だいたいは海の神である龍宮様や天神様が嫌うからであり、海に捨てるとそのたたりがあるからだとされています。
また、梅干しに限らず、果物の種やすっぱいものがいけないというところもあるみたいです。
捨てた種から芽を出し、大きくなる梅の木の伝説なども各地に残っていますが、こうした種の持つ生命力が言い伝えになったとも考えられています。